エリック・アンダースンの「ブルー・リバー」を聴き直す。

最近、1970年前後の音楽をよく聴いています。

歳がバレますが、管理人がまだ少年だった頃、初めて洋楽に目覚めて貪るように聴いていた、主にアメリカやイギリスのロックやフォークのアルバムを、最近また引っ張り出して来て、数十年たった、おやじの耳で聴き直しています。ひょっとして、当時は聴こえていなかった何かが聴こえて来るんじゃないかなどど思いながら。

今は、サブスク音楽配信サービスなんてものがあるので、当時は入手困難だったレアなアルバムなんかも、手軽に聴けるので有難い限りです。

そんなワケで、最近よく聴いている70年代のシンガーソングライターの事なんかを、しばらくは気の向くままに書いて行こうかと思っています。

個性豊かな70年代のシンガーソングライターたち。

1970年以前にも、シンガーソングライターは存在していたわけですが、そのほとんどがフォークソングに分類されている人達でした。フォーク系のシンガーソングライターの代表格は、言わずと知れた、ボブ・ディランでしょう。そのもっと前には、ウディ・ガスリーピート・シーガーと云った人たちがいたわけです。彼らが歌っていたのは、古い民謡のリメイクだったり、プロテストソングと言われる社会派ソングでした。

そうした流れを変えたのが、ディランだったわけで、彼がアコースティックギターエレキギターに持ち替えて、ロックバンドをバックに、社会ではなく、個人の内面を歌い始めた時から、新しいシンガーソングライターの時代が始まったんだと思います。

こうして、ディラン以降、自分の内面を歌うシンガーソングライターが続々と登場して来ました。そして、70年代に入ると、ジェイムス・テイラーキャロル・キングエルトン・ジョンポール・サイモンニール・ヤングブルース・スプリングスティーンと云った人達が現れ、ヒットチャートを席巻して、シンガーソングライターの一大ブームが起こるわけです。

遅れてきたフォークシンガー、エリック・アンダースン

エリック・アンダースンも、そんな70年代のシンガーソングライターブームの中で一躍脚光を浴びた一人なんですが、デビューは意外に古く、1960年代前半、ディランの少し後に、ニューヨークはグリニッジヴィレッジのフォークシーンから登場して来た人でした。

デビューアルバムは、1965年リリースの「Today Is The Highway」ですが、この中の「Come to My Bedside」は、当時の人気フォークグループ、ブラザース・フォアに取り上げられてヒットしています。日本でも「ぼくのそばにおいでよ」というタイトルで、ザ・フォーク・クルセダーズや、ソロ時代の加藤和彦によってカバーされました。デビューアルバム当時から、同時代のフォークシンガーがプロテストソングに拘る中、内省的な歌やラブソングをメインにした、その後のシンガーソングライターの出現を予感させる内容になっていました。

しかし、エリック・アンダースン自身は、60年代に6枚の素敵なアルバムを出しながら、ヒット曲とは無縁のまま70年代を迎えました。結局、早過ぎたシンガーソングライターだったと言えるのかも知れません。

必聴の名盤「ブルー・リバー(Blue River)」

今も現役で活動中のエリック・アンダースンは、現在まで多くのアルバムを出していますが、彼の代表作と云えば、72年の「ブルー・リバー」だという点に異議を唱える人は少ないと思います。70年代に出現したシンガーソングライター達の数々の名盤の中でも、管理人的には、5本の指に入る、傑作中の傑作だと思っております。

ナッシュヴィルで、カントリー系の一流ミュージシャンをバックに録音された「ブルー・リバー」ですが、聴こえてくる音楽には、あまりカントリー臭を感じません。

最早、フォークでもカントリーでもない、エリック・アンダースン独自の抒情的で優しいメロディーを、控えめなバックの演奏が静かに盛り立てています。特に、ジョニ・ミッチェルがコーラスで参加している表題曲「ブルー・リバー」は、このアルバムの魅力を凝縮したような名曲です。控えめなピアノのバッキングとアコーディオンの間奏が印章的で、大河の流れを思わせる、ゆったりとして味わい深く、時に力強いメロディーは何度聴いても心打たれます。

管理人的には、アルバム中唯一の他人の曲、「More Often Than Not」もオススメの一曲です。カナダのシンガーソングライターDavid Wiffenの曲で、このアルバムでは例外的に、カントリーロック色を前面に出した軽快な演奏が印象に残る、大好きな曲です。

アルバムセールス的には、あまり振るわなかった「ブルー・リバー」ですが、今聴いても色あせない、時代を超えた名盤だと、改めて思った次第です。

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